AIビジネスの本命(と僕が考えていること)

最近、内容はともかくとしてブログを久しぶりに連続更新した。実は足を骨折して3週間前から入院していて暇だ。とは言ってもベッドの上で起き上がってパソコンで作業するのが苦にならなくなったのは、やっと今週からだ。そして、昨日、抜糸も終わって、3週間ぶりに寝返りとかしてみたりして、いい感じだ。

 

というわけで、5年前ぐらいから、考えていることを少し書いてみようと思う。ディープラーニング革命以降、AIって新しい産業になるのかという質問される機会が多いので、僕も何回か考えてみたのだが、結論を言うと、ちょっと大きなビジネスはできそうもないよね、と言うことになった。が、一つだけこれはいけそうじゃないかというアイデアがあって、僕はいいアイデアを秘密にする価値はないと思っているので、5年前からいろんな人に喋ったし、有識者会議でもちょっと披露したりしたのだが、あんまりみんなピンと来てくれない。

 

いいアイデアだと思うんだけどなあ。そんなに技術的には難しくないから、つまらないテーマに思われているのかもしれない。でも、ビジネスになるのはそういうやつだ。5年前に考えたことなので、忘れかけている部分もあるが、思い出しながら書いてみる。

 

まあ、ざっくりいうと業務管理システムと人事システムと給与システムをつなげたようなものを作るということだ。ポイントは給与の上げ下げやボーナスは年に1回とか2回しかないことが多いが、それをAIを使って高頻度に仕事を評価し、給与をちょっと上げたり下げたり、マイクロボーナスを支給したりすることができるというのが核となるコンセプトだ。

 

これだけではちょっと分からないかもしれないのでと、まずはそもそもAIをビジネスにするのがなぜ難しいかを考えてみる。

 

簡単にいうとサービスのパッケージングが難しいからだ。ビジネスとして大きく成長させるためには、何からのスケーリングする仕組みが必要で、そのためにはAIという技術を何らかの形で再利用できるパケージにしなければならない。

 

これが、AIの場合は難しい。AIは、非常に汎用性の高い技術なんだけど、どうやってなんのために使うのかという自由度が高すぎて、ちょうどいい感じに再利用するようなパッケージングを見つけにくい。いろんな異なる目的が与えられて、エンジニアがその都度、頑張る、みたいなことを繰り返していても、労働集約的なビジネスにしかならなくて、なかなか大きなビジネスになりにくい。

 

似たような例を考えると、例えば「数学」というテクノロジーを使ったベンチャービジネスで大成功しようということで、めちゃくちゃ優秀な数学者10人が手元に集まったとする。ぶっちゃけ、だからといってどうしようもできなくて途方に暮れることだろう。

 

そして多くのビジネスにおいて、AIは必要とされるパーツのほんの一要素でしかない。AIじゃない部分のパーツの方がビジネスに成功において重要な場合がほとんどだから、AIだけで新しいベンチャーを作るなんていうのもちょっと現実的じゃなかったりする。例えばアクションゲームで敵兵の動きがとても優秀なAIがコントロールします。とか言ったって、ゲームが面白いかどうか、大ヒットするかどうかにはどれだけ影響あるか微妙だ。

 

業務システムにAIを組み込んでも似たようなことで、AI機能で勝負して、各企業がこぞって導入する業務システムなんて想像することは非常に難しい。何の効果があるのか具体的にはっきりしないと企業は簡単に新しいシステムを導入してくれない。

 

まあ、何だけど上記の人事・給与をつなげた報酬マネジメントシステムなら、各企業がこぞって導入するようなものになり、ビジネスをスケールできる可能性がある。

なぜかというと高頻度なマイクロ報酬マネジメントシステムを作ることによって、業務が効率化し、社員のモチベーションも上がり、結果として明確に人件費節減を実現できる可能性があるからだ。AIとかさっぱり分からない経営者も人件費の節減に繋がるなら、前向きになる。

 

ビッグマザー

 

この魔法のような報酬マネジメントシステムに仮の名前をつけよう。この記事では「ビッグマザー」というシステムだということにしよう。

 

ビッグマザーの原理は簡単だ。ビッグマザーには二つの重要なインタフェースが存在し、一つは、従業員の勤務状況をを判断するトリガーになるイベントを収集するBMEIと、従業員への報酬を与えるBMRIだ。

基本的にはBMEIからの情報をもとにBMRIのパラメータを調整して、従業員のコストパフォーマンスを最大にするという問題を解くだけだ。

 

重要なのは企業により、また、職種により、仕事のアウトプットを判断するデータは異なるし、人事制度に許される自由度が異なるだろうから、BMEIとBMRIにつなげるモデュールは変えたりカスタマイズしなければいけないという点だ。

 

ここにノウハウが貯められる余地がある。そしてノウハウの再利用のためにBMEIとBMRIの仕様が一つに統一さなれているとみんなハッピーであり、ここにデファクトをとれる大きなチャンスが存在する。

 

ビジネスの形態としては、オラクルとかがモデルになる。基本、コアモデュールとオプションモデュールを販売する会社にして、カスタマイズはVAR業者に任せるみたいなモデルが考えられるだろう。

 

大まかに説明すると、こんな感じだ。

 

 

ゲームの参加プレイヤーのイメージ

 

次にこのビジネスに可能性があるとして、どういうプレイヤーがありうるかを考えてみよう。

 

ここが本気でやったら決まりだよね、というのはSAPとSalesforceあたりか。まあ、でも巨大プレイヤーは小回りがきかないと相場が決まっている。

国内で考えると、企業の総務部とか業務部とかにシステムを納入できている会社は有資格者だろう。大手SIベンダーとかポジションは良さそうだが、そんな器用なことは出来なさそうだから、freeeみたいなところが良さげかもしれない。

あと、これビッグマザーのちゃんとした稼働実績を最初に作るのが超大事だから、ある程度均質な職種で実験できる社員やバイトをたくさん持っているようなところがいいかもしれない。ITリテラシーも高そうなところで言うと、デジタルハーツとか。

まあ、会社名は読者がイメージしやすいように適当に選んだだけだ。

 

成功するために必要な人材。

 

当然、B2BなのでB2Bに必要で強力な営業体制だったり、AIエンジニアのチームも必要だが、最も重要なポイントはビッグマザーの設計をするアーキテクトだ。技術にも企業の人事や労務にもビジネスにも習熟している人が望ましいが、まあ、いないと思うので、技術と地頭優先であとは覚えてもらうと言うのが現実的か。データアナリストみたいな人は向いてない。数字に強くて地頭がいい人がいい。若い森岡毅氏みたいな人をコンサル辺りから探してくる感じじゃないか。

ちゃんと動くビッグマザーを作ってちゃんと効果があるという実績をいかに短期間にたくさん作れるかが成功のキーファクターになる。

 

本当に人件費が抑制できるか?

 

多分、できるんじゃないかと言うのが、僕の勘だが、まあ、でも5年前と違って、ビッグマザーみたいなシステムは既に世の中に出現しつつある。

 

UBER EATSとかだ。この配達員に配られているアプリはゲームみたいな感覚で配達員のモチベーションを上げて働かせようという仕組みが組み込まれている。

 

まあ、きっと効果はあるんやないかと思う。

 

どれぐらいの投資が必要か?

 

僕の丼勘定によると、プロトタイプを作って本稼働させて最初の実績を作るまで3年で20億円ぐらい?

それからある程度成功するための勝負には50億円〜100億円ぐらい?それぐらいはかかるように思う。

そのあとは競合の有無とかによって全然変わるよねー。

 

ビッグマザーのアルゴリズムはどんなイメージになる?

 

どういう報酬の与え方がいいかは機械学習で決めるのだとしても、結果はある程度は想像できる。おそらく、時給のようにあげると下げるのが難しいし、上がったことをすぐに従業員が忘れてしまうようなものへの配分はできるだけ減らすように学習するんじゃないかと思う。もっと短期的なモチベーションを上げるような一過性の報酬を短い間隔で渡すと言うことになるんじゃないか。

そうすると人件費の向上も最低限に抑えられて、モチベーションも上がるようなバランスを見つけることができるように思える。しかもモチベーションが上がったあとは、きっと微妙にパラメータを変えて、モチベーションを下げずに平均報酬を下げるようなこともできるんだろうな。つか、UBER EATSとか絶対やってそう。

・・・・・。

つうか、これ、なんか最悪のシステムだな。こんなのが成功したら世の中悪くなるじゃん。法律で規制した方がいい。

 

このビジネス、さっきは思いつかなかったけどパソナみたいな会社も向いているかもしれない。

 

なんか、思い出してきた。5年前も同じ結論になって、それ以上考えるのをやめたんだった。忘れてた。

 

まあ、いいや。でも、まあ、多分、こういうシステムもビジネスも、遠くない将来に生まれると僕は思う。その時、外資に持ってかれるよりは、誰であれ日本のプレイヤーがいた方がいいんじゃないか。

 

と言うことで、こんなAIビジネスいかがでしょうか?

 

僕自身も、もし拉致監禁されてAIでベンチャー作れと脅迫されるようなことがあれば、真っ先に自分でもやりたいと思うビジネスだ。

 

以上