入院生活七変化 その1

昨日は何年かぶりにTwitterを再開して新鮮だった。いや、でもTwitterはやっぱりダメだ。無限に時間が吸い取られて、キリがない。

 

さて、骨折してから、そろそろ1ヶ月になる。手術するのも病院に入院するのも人生初めての経験だ。

僕にとっては、いろいろと興味深い新しい発見があったので、書いてみたい。

 

まず、なぜ骨折したのかというと庭で滑って転んだからだ。

転んだくらいでなぜ手術が必要なほどの骨折をしたのかと言うと、生後3ヶ月の娘を腕に抱いていたからだ。何がなんでも子供だけはそっと地面に下ろしてから転ぶと、めちゃくちゃ変な角度に足首が捻られて、2回ブチっという激痛が走った。骨折とか人生でしたことないのに、これは折れたなとなんとなく分かった。

 

いや、思ったけど、これは愛じゃないと思った。そんなこと考える余裕もなかった。勝手に体が動いていた。たんに親とは子供の生命の安全のためには自分の安全など無視するようにつくられている。そういう生き物なんだと思った。

 

まあ、ここまではいい話なんだけど、結局は転んだわけで足首も折れていたので、僕は体を支えることができず、娘の体の上にほぼ全体重を乗せて落下した。生後3ヶ月の娘の体は柔らかくとてもいいクッションになってくれた。娘は数秒の沈黙の後、当然のごとく大号泣した。

 

僕は娘をともかく家に連れて帰って安全なところに寝かせようと立ち上がった。激痛はとりあえず無視したが、数歩進んだところで体が動かなくなった。これもあんまり良くなかったんだろうなと、今になって思う。

 

とりあえず妻の運転するクルマに乗って、近くの病院に駆け込んだ。海の日のある3連休の初日だった。救急で診察してくれた医師は、レントゲンを見るなり、「これは完全にやっちゃっていますね。これは即入院で即手術です。一刻も早くすぐに手術やった方がいい。でも、連休なのでうちでは受け入れできないので、連休明けにまた来てください。」と言われた。

 

3日後の連休明けに行くと整形外科の医師が診察をしてくれた。「これはすごく腫れちゃっているねー。すぐ入院して手術しないといけないのにほっといちゃったから腫れたんですよ。ダメですよ・・・」医師は僕を叱ろうとして途中で黙り込んだ。連休中なので入院させてくれなかったのは自分の病院だと気がついたのだろう。

 

ここで教えてもらった豆知識だが、ボルトを入れてくっつけなければいけない骨折の場合は、すぐに手術が必要だ。なぜかというと骨折したら、当たり前だが、骨折した部分がどんどん腫れてくる。腫れると表面の皮膚がパンパンに膨れ上がって伸びてしまう。伸びた部分の皮膚をボルトを入れるために切開手術すると、最後に傷口をきれいに縫い合わせることが皮膚が伸びているのでできなくなる。

だから腫れちゃうまでにとっとと手術をするか、もう腫れている時は一旦腫れが引くまで待たないと切開手術ができないのだそうだ。腫れが引くまでには入院して安静にして患部を冷やしまくって2週間ぐらいかかる。しかもその間に折れた骨が離れた状態で放置されちゃうから、リハビリも時間がかかるのだそうだ。

 

「手術してリハビリすれば一応は治りますけど、完全に元の状態になるとは思わないでください」突然、医師に宣告された。

「もちろん日常生活には支障ないぐらいには回復はすると思いますが」と医師は続けた。

 

一瞬、頭が真っ白になった。これってあれじゃん。マンガとかで主人公の最大のライバルとかがよくなる運命じゃん。

 

お話の中のことだと思っていたのに、まさか、自分がそうなるなんて。

 

どうやら、いつかはプロのサッカー選手になって活躍したいという僕の子供の頃からの夢は、もちろん、もうほとんど可能性はないことは分かってはいたが、とうとう完全に諦める時が来たようだ。

 

さて、医師の説明によると普通に腫れが引くまで待つと2週間かかるんだけど、それを1週間に短縮できて、その後のリハビリも回復が早くなるというお勧めな方法があるという。そのためには今日すぐにでも、一回余分に手術が必要だという。

 

「切開できないんで代わりに骨に穴をあけて鉄の棒を立てて外側で固定するというやり方です」なんか恐ろしいことを言い始めた。より詳しく図解してくれようとしたけど、やりますけど想像したくないので説明しなくていいですと言って断った。

 

ちなみに結果がこの写真だ。ちなみにこの写真は手術1週間後のもので、それまで僕は自分の足がどうなっているか怖くて見ないようにしていた。

 

元々はベトナム戦争で開発された軍事技術。その後、民間利用された骨折治療の最新テクノロジー

「これ、わりと新しい技術でベトナム戦争のときに使われて広まったんですよ」さすが合理的なアメリカン。ベトナムで骨折した負傷兵は、とりあえずこれで仮に固定しといて輸送して、本国でちゃんとした手術をしたんだそうだ。ベトナム戦争って新しいのか?とも思ったが、整形外科の世界の進歩ってそんなもんなのかもしれない。

 

次は麻酔医から説明があった。

「今回は全身麻酔は必要ないと思います。背中から麻酔薬を入れる方法にしようと思います」

「いや、全身麻酔の方が気が楽なんですけど」

「まあ、僕も自分だったら全身麻酔にしたいですね」麻酔医は笑ってくれただけだった。いや、だったらしてよ。

 

でも、結局、全身麻酔になった。やったぜ。

 

全身麻酔の手術は楽ちんで、麻酔されて意識を失い、目を覚ましていたときには終わっていた。手術後はリカバリールームで一晩を過ごしから、病室へ移動した。僕の右足は全く動かなくて感覚がなくなっていた。いや、関係ない左足も感覚がなかった。ベッドの上で、ずっと右足を固定していて動けない寝たきりの入院生活がそこから始まることになる。

 

長いので一旦ここで終わり。