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インターネットの未来の正しい議論

今回は珍しく書評を書く。それもよく僕本人と間違えられるという設定でお馴染みの人が筆者である新刊だ。

鈴木さんにも分かるネットの未来

この本はスタジオジブリの機関誌「熱風」という一般には販売されていない雑誌で1年以上にわたって連載されたものを単行本化したものである。

この連載がどういう風に世間に受け止められるかをぼくはわりと注目していた。なぜかというと、これはネットは門外漢であるスタジオジブリ鈴木敏夫プロデューサーにネットの現在と未来を説明するという体でありながら、おそらくは当時はだれも指摘していなかったネットの実態と未来予想について筆者が本音を自分で執筆した本だからだ。

筆者のこれまでの本はすべてインタビューをまとめた本であり、喋っていることもわりと簡単なことばかりでそれほど難しい理屈も出てこない。

しかし、この本は聞き書きではなく、筆者がかなり時間をかけて自分で文章を書いた本であり、読者に対する手加減がわりとない。そしてIT業界では当事者たちからはあまり語らないようなこと、もしくは理解していないこと、ネットでの一般常識とは違うことを中心に、損得考えずにそのまま書いてあるのだ。

それがIT業界のひとはだれも読んでなさそうで、そもそもほとんどの書店には置いてないような雑誌に連載されるのである。

いったいなにが起こるのだろうか。とぼくは好奇心をもって観察していたのである。

どうなったのか?

じつは結果としてはなにも起こらなかった。

やはり本来のターゲットになるようなひとの手元にはほとんど届かなかったようだ。まあ、予想通りの話でもある。

しかし、連載終了からも、早くも1年がたったが、この本の内容はまったく古びていない。

むしろ一部は予言のように現実がこの本の内容に追いつき始めていて、より説得力のあるタイミングで出版されることになったのだと思う。

この本に書かれているテーマはいくつもあるが、もっとも重要なものは、世界中の国でインターネットという場が治外法権となり、国家の主権が及ばない場所になっているという指摘だ。

歴史の中で国家というものが解体され、消滅していくとすれば、それはインターネットの場から起こるだろう。

このことはインターネットの登場したときにそれこそ伊藤穰一氏などが予言していた話であり、新しい話ではない。しかし、それは遠い未来の予測として漠然として受け止められ、実感を伴う問題として世の中に受け止められていなかったというのが現実だろう。

しかし、インターネット上で国家の主権が通用しなくなり、かわってグーグル、アップル、アマゾンなどのグローバルプラットホームが、租税権、立法権行政権、裁判権などを行使しつつあるというのは、現在進行形で進んでいる事実だ。

歴史の中でいまは国家からグローバルプラットフォームに主権が移動しつつある過渡期であるという認識を、はっきりと持つべきではないかというのが、ぼくの主張だ。

こういう状況を、ネットで活躍する批評家たちですら、ちゃんと理解していないように見える。

数日前の東浩紀氏のツイートを見てみよう。

 

 

この東氏がやくざのみかじめ料みたいと切り捨てたEUの行動は、主権を奪われつつある国家権力のグローバルプラットフォームに対する反撃である。いままさにネット上の主権をめぐった争いが行われつつあり、どちらかというと劣勢なのは国家権力側だろう。

それを従来型の国家権力=悪、インターネット=自由という素朴な認識からくる善悪判断で判断したかのようなツイートで切り捨てるのが、日本のネットに詳しい有名批評家の現実である。

これからのインターネットでなにが起こるか、なにが本当の争点なのか。筆者がなにを考えているか知りたいひとは読んでほしい。鈴木さんにも分かると入門書を装っているが、鈴木さんにも分かってもらおうという手加減はまったくないガチの中身だ。

 

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